つぶやき書評「ファイナンス思考」

「ファイナンス思考」 (85点)。

 財務諸表の読み方を教える本ではない。  

著者が繰り返し強調している。 

「本書ではファイナンスの『理論』や『知識』以上に、『考え方』こそがより重要であると、繰り返し述べてきました。これは言い換えれば、ファイナンス思考とは取りも直さず『態度』や『思想』の問題であり、究極的には『志』の問題であるということです」 

これは、ファイナンスに限らず、多くのことに言えると思う。態度、思想、志が軽視されて、HowやWhatばかりを得たがる傾向。組織の舵取りをする者がそれでいいのか? という問いを投げかけたいのではなかろうか? 


「売上志向と日本的経営が組み合わさった状態を、一歩引いて考えてみると、固定費が年々自然増してきく構造にあることがわかります。日本的経営に沿って終身雇用と年功序列を同時に成立させるのは、ネズミ講に似た状態です。新入社員は低い賃金に耐えて滅私奉公をし、後になって給料を取り戻すという構造にあるからです。この構造を維持するためには、常に親ネズミ(ベテラン)を支える子ネズミ(新入社員)を、毎年多数採用しなくてはないなりません。これは会社から見ると、賃金コストが線形に伸び続けることを意味します。日本的経営を続けると毎年社員の採用を続けなければならず、また採用した社員の雇用と年功序列賃金の維持のために、売上の成長を持続しなければなりません。その結果、売上を追い求めるためにさらに採用するといった循環構造に陥るのです」  


高度成長期に効果的だったやり方が、実は国家総動員法の名残であることは、はじめて知った。それを知ると恐ろしい。戦争に突入するための考え方であり、組織のあり方であるということなのだから。 


全文を読むと分かるように、売上を追い求めることが悪いと言っているわけではない。目先の売上を追い求めるあまりに長期的に企業価値を上げるための選択をしない場合も多いことを伝えている。 ファイナンスの知識なくても読めるし、読みやすい本。オススメ。 


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